今日も喫煙所では20代の役者が団子のように固まってお話をしています。なにやら珍しく普段のお仕事について話しているご様子。
「あれ、トモさん何見てんのって、こないだの雑誌か」
「そう。今日発売でマネージャーが持ってきた」
「うわー知盛表紙じゃんー。しかも姐さんとセット!」
「あー、何か顔立ち似てるからカメラマンが並べたがるんだよねぇ」
「なにこの知盛!カッコつけてる!うーわーモデル立ちしてるし!モデルみてぇ」
「将臣、てめ、俺モデル。知らないなら教えてやる。俺、モデル」
「ごめ、あたしも知らんかった。モデルしてたの!?」
「何アンタ!何この二人!」
三人とも休み無く煙草を吸うのでもくもくです。そもそも監督自身がとてつもないスモーカーなのでみんな気にしません。
「おシゲはあんまモデルやらんよね。まさおも」
「あー、俺、かっこつけて写るのなんか苦手。そこいくとヒノエはすげぇ」
「専属やってるもんな。政子さんはもともとモデル出身だし」
「そっそ。すごいよーあのヒトは。泰衡と九郎は取材写真くらいだね」
「弁慶、こないだ雑誌出てた」
「へー珍しい。あのメンド臭がりが」
「あのこ、今日もカンペ作ってセットに隠してたわ。セリフ覚えろっての」
「マジで!?昨日隠し場所悪くて美術さんに怒られたばっかじゃん!」
「将臣もヒトのこといえんと思う」
「うるせぇよ、この声だけ役者!」
「声だけ役者!確かに!」
知盛君は監督が無計画なせいでまだ声でしか出演していません。
あ、と小さく呟いて知盛君はつけたばかりの煙草を消してそっぽ向いてしまいました。将臣君はおかしいなと思って振り向きました。
「のんちゃん、この間の宿題できた?」
「はい!もー将臣さん、教え方上手すぎです!」
「英語ならべんか九郎頼むといいよー。あいつらああ見えてバイリンガル」
「えぇ、そうなんですか!?すごーい。ひーくんってばあたしに宿題教えてくれないんですよ」
「それは頂けないねぇ、今度お姐さんが叱っておくわ」
「お願いしますー。えと、と、知盛さんは何か得意ですか……?」
「……」
普段から目つきの悪い知盛君はなぜか押し黙ってむうと口を引き結んでいるのでのんちゃんはちょっとびくびくしています。
「コイツ、これで幕末マニアなの。新撰組全員いえるぜー、な、知盛?」
「……んなことねぇよ」
「あと料理マニア。今度望美ちゃんも何か作ってもらいなー」
「得意じゃない」
知盛君の返答は不自然なくらい短いです。のんちゃんの笑顔もだんだん強張ってきました。そこに、遠くから重衡さんが姐さんと将臣君を呼んできました。
「ねーさーん!まさーおみ!なぁなぁ、これすげぇ!」
「今行くから待ってろー」
「騒ぐなおシゲー」
というわけで喫煙所には知盛君とのんちゃんだけが残りました。
二人がどんな会話を交わしたのかはあとで聞き出すことにします。
(知盛・姐さん=ELLEとかのブランド雑誌のモデル→仕事がたくさん来るので予約待ち
ヒノエ=裏原宿系の雑誌の専属モデル→朔と一緒に写ったりもする
政子=主婦雑誌からブランドまで全般にこなすモデル→綺麗な母親として有名
のん=ノンノ系の雑誌を中心にモデル→仕事が来たら受ける
朔=意外にもsoupの専属モデル→役者とモデルが半々)
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