困ったもんだ、と
その男は困った風でもなく、軽い口調で言った
Big Wishes for You!「あのさぁ、知盛」
「……なんだ」
顔一つ分高いところから低い声が降ってくる。ちらと視線を上にすれば銀色の後頭部が対して揺れもせず先を歩いていた。この分だと、振り返る気は全くないようである。
「クリスマスなんだから人が多くて当然なんだと思うよ」
「知ったことか」
ふんと鼻から息を吐き出す。仕方ないので外出している彼にとっては、確かにクリスマスだカップルだ、なんてことは全く関係のないことである。まして、あの世界は仏教が浸透していた時代である。異教のお祭りなんか、二重の意味で関係がない。
「でもさ、その凶悪な面さらして出歩くのはどうかと思うけど」
「……」
「だってほら、あの人、知盛見て道譲っちゃったよ!」
「……」
コふざけた言葉にもムッツリとした沈黙しか返ってこない。こりゃ本格的に不機嫌だわ、まぁどうしましょうとつらつら考えていると、ポケットに入った携帯電話が鳴った。
「もしもーし。あ、ちょ、先に行くなって!迷っても知らないから!」
「知るか……」
仕方なしに、早足で歩いていく彼に追いついて会話をいくつか交わす。携帯電話の向こうにいる人は、大丈夫?、と優しく聞いてくれた。
「あー大丈夫大丈夫。これからそっち行くからー」
「……来るの?」
「おー、ばっちり連れて行くよー」
二三言電話でライトな会話を交えながらも、道に迷うことはない。明後日の方向に行こうとする知盛の袖をひっ捕まえて角を曲がった。捕まえていないほうの手は、これから会いに行く人への、お土産を持たせている。
大体、この口を開けば眠いとかだるいとかしか言わない男を、混雑が予定されている日に連れ出すという、いわば仏でもやらんような所業をやってるんだからこれくらい、当然だ。
「……まだ、歩くのか」
「はいはい歩きますよーその足は何のためですかー」
「……」
「だからその凶悪面を引っ込めろと」
もうちょいだから、と限りない嘘をつきつつ、歩けばその家が見えてくる。
「あのさ」
「なんだ」
「あたし、これから用事あるから、彼女によろしく言っておいてね」
「……意味が、わからんな」
「だから、抜けるということです。お二人でよろしくやってくださいね」
あの家、と指をさして目的地を示すと、知盛は菫色の瞳をきゅうと絞らせてこっちをみてくる。が、その中に怒りの色は見えない。この顔だ、この皮肉って笑ってる顔。
この顔見ると、無性にいじめたくなるんだが、ここはぐっと我慢。食うか食われるかのサド合戦になってしまう。だって今日は特別な日。彼の――嘘か真か、はたからみれば判別つかないのだが――想いを寄せる人が、待っている。
「お前もまぁ良くやるものだな」
「うん、まぁどうでもいいよ。じゃあね」
というわけで唐突に任務は終わった。
今日と言うこの日を、全ての恋人達が祝福の光の下にいることを願うこの日を、一緒に過ごしたいと言い出せなかったあの人。愚痴と不満しか口にしないくせに、なんだかんだで一緒にいるあの人は、今、どうやってこの男のことを待っているのだろうか。
今日くらい、好きだよと素直に言ってみればいいのに。
素直じゃないなぁ
つと振り返れば、知盛は家の玄関をくぐるところだった。
まぁ、クリスマスだし、ね?
二人が、幸せに過ごせますように。
だってクリスマスはイチャコラこいても許される日、ですよね?
説明をつけないとわからん駄文ですいません。
あれです、
面倒くさがりでクリスマスとかどうでもいいと思ってる知盛を、知盛の彼女の家まで連れていくって話です。
知盛の彼女は誰か?
えー、知盛好きの皆さんですよ。
じゃんが貴方のおうちまで知盛を連れて行きます。
その前に逃げるけどね!
ごめんなさいごめんなさい!こんなんしか小話浮かんでこないんです!ぎゃふん!
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