無計画で有名な監督もさすがに困るのは知盛さんの不器用さらしいと小耳に挟みました。
しかし監督は鬼なので決して知盛さんの衣装を変えようとしません。
「……あ、やべ」
とまぁ知盛さんはいつものごとく衣装の編み上げブーツを絡ませて履けなくなるわけですね。
いい加減慣れろって話です。
「知盛さん?どうしたんですか?」
偶然通りかかった望美ちゃんが声をかけてくれました。とってもいい子です。男前ですがとってもいい子です。
「あ~また絡まっちゃったんですか。ちょっと、足をここに上げてくれます?」
「え?いや、いいよいいよ」
「でも衣装さん呼ぶとまた怒られますよ~直しますね!」
スタジオに入る扉近くのベンチで知盛さんと望美ちゃんが密着プレイ一歩手前です。いつもならせわしなく通りかかるスタッフも気配がしません。知盛さん、年に似合わずドキドキです。
「結構かたく結びましたね……この紐、こうやって、えと」
「……」
「これで、あ、解けた。このまま、全部仕上げちゃっていいですか?」
「あ、うん」
「えーと、こうなってるのか、そしたらこう、かな」
知盛さんの視線はよく動く指先と、セットされて髪をアップしてるのでいやでも目に付く項です。後れ毛ってエロイですね。
「……」
「はい、出来ました!」
にっこり笑って望美ちゃんが顔を上げると、知盛さんは急に視線を逸らして手で顔を覆います。どうしたことでしょう。
望美ちゃんも不思議に思って呼んでも何も言わないままです。
「……どうも」
たったそれだけ言うと、さっさとスタジオの中に入ってしまいました。
あとに残された望美ちゃんはよけないことしたかな、とちょっぴり落ち込んでしまいます。
このあと、それなりにすったもんだがあったらしいのですが、それはまたの機会に。
私信:
葉月ちゃん、こんなんでおけーですかいな?
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